Blog
採用と選考·

インドネシアの試用期間は最長3か月|PKWT・PKWTTの違いと採用時の注意点

インドネシアで社員を採用する際に知っておきたい試用期間(Probation)のルールを解説。PKWTTとPKWTの違い、最長期間、延長の可否、給与、試用期間中の解雇、評価方法など、日系企業が注意すべき実務ポイントを紹介します。
インドネシアの試用期間は最長3か月|PKWT・PKWTTの違いと採用時の注意点

インドネシアで社員を採用する際、

「試用期間(Probation)は何か月にすればよいですか?」

「3か月以上に延長できますか?」

「試用期間中なら解雇できますか?」

「試用期間中は給与を低く設定できますか?」

「契約社員にも試用期間を設定できますか?」

といった質問を日系企業から受けることがあります。日本では入社後に3か月や6か月程度の試用期間を設定する企業もありますが、インドネシアでは雇用契約の種類によって、試用期間を設定できるかどうかが異なります。特に重要なのが、PKWTT(無期雇用契約)とPKWT(有期雇用契約)の違いです。インドネシアでは、PKWTTでは最長3か月の試用期間を設定できます。一方、PKWTには試用期間を設定することができません。また、「試用期間中だから会社が自由に解雇できる」「試用期間だから給与を低くできる」と考えることにも注意が必要です。

Peoplyeeでは、2013年から1,200社以上の日系企業のインドネシア採用を支援してきました。その経験をもとに、本記事では、インドネシアの試用期間について、期間、PKWTとPKWTTの違い、給与、評価、試用期間中の解雇など、日本企業が採用時に知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。

※本記事は一般的な人事・採用実務の情報提供を目的としており、個別案件についての法的助言ではありません。実際の雇用契約や解雇については、最新の法令を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

この記事の結論

インドネシアの試用期間について、まず押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  • PKWTT(無期雇用契約)では試用期間を設定できる
  • PKWTTの試用期間は最長3か月
  • PKWT(有期雇用契約)には試用期間を設定できない
  • 試用期間を3か月から6か月などへ延長することはできない
  • 試用期間中でも適用される最低賃金を下回る給与にはできない
  • 試用期間中だからといって、何の手続きもなく自由に解雇できるわけではない

特に日系企業が注意したいのが、「まず3か月働いてもらって、問題なければ正式採用する」という考え方です。試用期間中であっても、すでに会社と社員の間には雇用関係があります。そのため、試用期間は「採用するかどうかを決めるために働いてもらう期間」というより、採用した社員が実際の仕事や組織に適応できるかを確認する期間と考えた方がよいでしょう。

インドネシアの試用期間(Probation)とは?

試用期間とは、新しく採用した社員について、入社後の一定期間、実際の仕事を通じて適性や業務パフォーマンスなどを確認する期間です。インドネシア語では一般的に「Masa Percobaan Kerja」と呼ばれます。企業側はこの期間に、

  • 仕事内容を理解できているか
  • 求めるスキルを持っているか
  • KPIや目標に対して行動できているか
  • コミュニケーションに問題がないか
  • 会社のルールを守れているか
  • Mission・Vision・Valueなど会社の考え方と合っているか

などを確認します。一方、社員側にとっても、実際の仕事内容、上司、チーム、会社の文化などを理解する期間になります。重要なのは、試用期間を単に「様子を見る3か月」にしないことです。何をもって試用期間を合格とするのかを入社時点で明確にしておくことが、実務上非常に重要です。

インドネシアの試用期間は最長何か月?

インドネシアでは、PKWTT(Perjanjian Kerja Waktu Tidak Tertentu/無期雇用契約)について、試用期間を設定する場合は最長3か月です。つまり、「最初は3か月にして、もう少し様子を見たいのでさらに3か月延長する」といった運用はできません。日本本社の就業規則で試用期間が6か月となっていたとしても、そのルールをそのままインドネシア法人へ適用できるとは限らないため注意が必要です。インドネシアで雇用する場合には、インドネシアの雇用ルールに合わせて制度を設計する必要があります。

一方、実務の現場では、雇用契約書に最初から「試用期間6か月」と記載し、会社と社員の双方が合意したうえで入社しているケースを目にすることもあります。しかし、会社と社員の双方が合意していることと、その契約内容が法令上有効であることは別の問題です。インドネシアの法令上、PKWTTで設定できる試用期間は最長3か月です。そのため、「本人も同意しているから6か月でも問題ない」と考えるのではなく、雇用契約を作成する段階から法令に沿った試用期間を設定することが重要です。

PKWTTとPKWTでは試用期間のルールが違う

インドネシアの試用期間を理解するうえで、最も重要なのがPKWTTとPKWTの違いです。

PKWTT|無期雇用契約

PKWTTは、期間の定めのない雇用契約です。一般的に日本語では「正社員」「無期雇用」などと説明されることがあります。PKWTTでは、最長3か月の試用期間を設定することができます。例えば、

入社日: 4月1日 試用期間: 4月1日~6月30日

という設定が考えられます。ただし、試用期間を設定する場合には、期間だけではなく、雇用条件や評価方法、社内ルールなども明確にしておくことが重要です。

PKWT|有期雇用契約

PKWT(Perjanjian Kerja Waktu Tertentu)は、一定期間または一定の仕事の完了などを前提とした有期雇用契約です。こちらは試用期間を設定することができません。PKWTに試用期間を設定した場合、その試用期間の条件は無効となり、当該期間も勤続期間として計算されます。そのため、「まず3か月のProbationとして契約社員で採用し、問題なければ正社員にする」という設計をする際には注意が必要です。「3か月のPKWT」と「3か月の試用期間」は同じものではありません。

試用期間は3か月から6か月へ延長できる?

PKWTTの試用期間は最長3か月です。そのため、

「3か月では判断できなかったので、さらに3か月延長する」

「業務パフォーマンスが微妙なので、Probationを1か月だけ延長する」

といった方法で、法定上限を超えて試用期間を継続することはできません。だからこそ、試用期間の終了直前になって初めて、「この社員をどうしよう?」と考えるのでは遅い場合があります。Peoplyeeでは、試用期間中から定期的に業務パフォーマンスを確認することをおすすめしています。例えば、

入社時:期待する役割・KPI・評価基準を説明する

1か月目:仕事内容への適応状況を確認する

2か月目:業務パフォーマンスを評価し、改善すべき点をフィードバックする

3か月目:試用期間全体を評価し、最終判断を行う

という流れです。このように途中でフィードバックを行うことで、会社側だけではなく、社員本人も「何ができていて、何を改善する必要があるのか」を理解できます。実際にPeoplyeeの人材紹介サービスを通じて入社した方の中でも、残念ながら試用期間中に雇用が終了したケースはあります。採用面接だけで、その人の能力や会社との相性を100%見極めることは難しいからです。だからこそ重要なのは、試用期間終了直前に突然判断するのではなく、入社時に期待する役割と評価基準を明確にし、試用期間中に継続的な評価とフィードバックを行うことです。

試用期間中の給与は安くしてもよい?

「試用期間中はまだ正式採用ではないので、給与を低くしてもよいですか?」という質問もあります。インドネシアでは、PKWTTの試用期間中であっても、会社は適用される最低賃金を下回る給与を支払うことはできません。つまり、「Probationだから最低賃金以下でもよい」という考え方はできません。一方で、試用期間終了後に給与を見直す制度そのものについては、最低賃金だけではなく、雇用契約、会社規則、給与体系などを含めて適切に設計する必要があります。例えば、

入社時: Rp 10,000,000 試用期間終了後: Rp 11,000,000

といった条件を提示するのであれば、いつ、どのような条件で給与が変更されるのかをOffer Letterや雇用契約などで明確にしておくことが重要です。

試用期間中なら簡単に解雇できる?

ここは日系企業から非常によく質問されるポイントです。「Probation中だから、合わなければすぐに辞めてもらえますよね?」と考える企業もあります。しかし、試用期間中だからといって、何の手続きもなく自由に雇用関係を終了できると考えるべきではありません。PP No.35/2021では、試用期間中に雇用関係を終了する場合、PHK(雇用終了)の通知書を、原則として雇用終了日の遅くとも7営業日前までに社員へ通知することが定められています。また、雇用終了に関して社員が異議を申し立てた場合には、労使間での協議など、紛争解決の手続きが必要になる可能性があります。そのため実務では、

「何となく合わなかった」

「上司との相性が悪かった」

といった曖昧な判断ではなく、試用期間中の業務パフォーマンスやフィードバックの内容を記録しておくことが重要です。試用期間だからこそ、入社時に評価基準を明確にし、その基準に基づいて判断できる状態をつくっておきましょう。

試用期間中に何を評価すればよい?

試用期間を有効に活用するためには、入社前または入社時に評価項目を決めておきましょう。Peoplyeeでは、大きく次の4つの項目を確認することをおすすめしています。

1.仕事内容の理解

まず確認したいのは、本人がJob Descriptionを理解し、求められている仕事を遂行できているかです。「仕事を頑張っているか」という曖昧な評価ではなく、具体的な仕事内容や期待する役割に対して評価します。

2.KPI・目標

営業など数値化しやすいポジションであれば、KPIや目標を設定します。ただし、入社直後から最終的な目標だけを見るのではなく、試用期間中に達成すべきプロセスKPIを設定することも有効です。例えば営業職であれば、

  • 新規顧客へのアプローチ数
  • 商談数
  • Proposal数
  • 顧客との関係構築
  • CRMへの入力

などです。最終的な売上だけではなく、成果を生み出すために必要な行動ができているかも確認します。

3.スキル・能力

採用時に設定したJob Profile(求める人物像)と照らし合わせて、実際の能力を確認します。例えば、

  • 営業力
  • 問題解決力
  • コミュニケーション能力
  • マネジメント能力
  • 専門知識
  • PC・システムスキル

などです。面接では「できる」と判断した能力が、実際の仕事でも発揮されているかを確認します。

4.行動・Value

業務パフォーマンスだけではなく、仕事への取り組み方も重要です。例えば、

  • 約束を守る
  • 報告・連絡・相談をする
  • フィードバックを受け入れる
  • 自ら行動する
  • チームで協力する
  • 会社のValueに沿って行動する

といった点です。ただし、「カルチャーが合わない」「考え方が合わない」といった抽象的な評価だけにせず、実際にどのような行動があったのかをもとに評価することが重要です。

試用期間でよくある5つの失敗

1.試用期間の評価基準がない

最も多い問題の一つです。入社時には、「まず3か月見てみよう」となっていたものの、3か月後に、「何をもって合格にするのか」が決まっていないケースです。これでは上司の主観で判断することになってしまいます。入社時点で、仕事内容、期待する成果、KPI、行動などの評価基準を明確にしておきましょう。

2.3か月目に初めて評価する

試用期間終了直前に初めて業務パフォーマンスの問題を本人へ伝えても、改善する時間がありません。問題があれば1か月目、2か月目からフィードバックを行い、「何ができていないのか」「何を改善する必要があるのか」を本人にも伝えることが重要です。

3.PKWTに試用期間を設定する

PKWTには試用期間を設定できません。「契約社員だからまず試用期間」という感覚で契約を作らないよう注意が必要です。PKWTとPKWTT、それぞれの雇用契約の違いを理解したうえで採用する必要があります。

4.試用期間を延長する

「もう少し見たい」という理由で3か月を超えて試用期間を延長することはできません。だからこそ、3か月以内に判断できる評価プロセスを作ることが重要です。

5.「Probationだから簡単に解雇できる」と考える

試用期間中でも雇用関係は存在します。そのため、業務パフォーマンスの記録、本人へのフィードバック、雇用終了時の通知など、適切なプロセスを踏むことが重要です。

インドネシアの試用期間に関するよくある質問(FAQ)

Q. インドネシアの試用期間は何か月ですか?

A. PKWTT(無期雇用契約)では、試用期間を設定する場合は最長3か月です。3か月を超えて試用期間を設定することはできません。

Q. 試用期間を3か月から6か月へ延長できますか?

A. できません。PKWTTで設定できる試用期間は最長3か月です。「もう少し業務パフォーマンスを確認したい」という理由で3か月を超えて延長することはできません。実務上、6か月などの試用期間を契約書に記載しているケースを目にすることはありますが、双方が合意していることと法令上有効であることは別の問題です。

Q. PKWT(有期雇用契約)にも試用期間を設定できますか?

A. できません。PKWTでは試用期間を設定することは禁止されています。仮にPKWTに試用期間を設定しても、その試用期間の条件は無効となり、その期間も勤続期間として計算されます。

Q. 試用期間中は給与を低くできますか?

A. 試用期間中であっても、適用される最低賃金を下回る給与を支払うことはできません。試用期間終了後に給与を変更する制度を設ける場合には、雇用契約や給与制度との整合性も確認する必要があります。

Q. 試用期間中なら社員をすぐに解雇できますか?

A. 「試用期間中だから即日で自由に解雇できる」と考えるのは適切ではありません。PP No.35/2021では、試用期間中に雇用関係を終了する場合、PHK(雇用終了)の通知書を、原則として雇用終了日の遅くとも7営業日前までに社員へ通知することが定められています。個別案件では雇用契約、会社規則、解雇理由なども関係するため、必要に応じて専門家へ確認してください。

Q. 試用期間中に評価すべきポイントは何ですか?

A. Job Descriptionに対する業務パフォーマンス、KPI・目標、必要なスキル、問題解決力、コミュニケーション、勤務態度、会社のValueに沿った行動などを確認します。入社時点で評価項目を本人にも説明しておくことが重要です。

Q. 試用期間終了後は何をすればよいですか?

A. 試用期間終了直前ではなく、期間中から定期的に評価とフィードバックを行い、3か月以内に判断できるようにします。継続して雇用する場合にも、試用期間中の評価を本人へフィードバックし、その後の目標を設定するとよいでしょう。

まとめ

インドネシアで社員を採用する際、試用期間は人材を見極めるうえで重要な期間です。一方、日本とインドネシアでは試用期間に関するルールが異なるため、日本本社の制度をそのまま適用しないよう注意が必要です。特に覚えておきたいのは、PKWTTでは最長3か月、PKWTでは試用期間を設定できないという違いです。また、試用期間中だからといって、最低賃金を下回る給与にしたり、何のプロセスもなく自由に雇用関係を終了したりできるわけではありません。そして実務上さらに重要なのは、3か月という期間を「様子を見る期間」にしないことです。入社時に、

  • Job Description
  • 期待する役割
  • KPI・目標
  • 評価基準
  • 会社が求める行動

を明確にし、1か月目、2か月目から定期的にフィードバックを行う。そうすることで、企業側は3か月以内に適切な判断をしやすくなり、社員側も何を期待され、何を改善すればよいのかを理解できます。試用期間は、単に社員を選別するための期間ではありません。採用した人材が会社に適応し、早期に成果を出せる状態をつくる最初の3か月として活用することが重要です。

Peoplyeeでは、2013年から1,200社以上の日系企業のインドネシア採用を支援してきた経験をもとに、仕事内容(Job Description)の整理、求める人物像(Job Profile)の設計、候補者のスクリーニング、人材紹介、入社後の人事制度まで幅広くサポートしています。「インドネシアで初めて社員を採用する」「どのような人材を採用すればよいか分からない」「採用後の評価制度や人事制度も整備したい」とお考えの企業様は、ぜひお気軽にPeoplyeeまでご相談ください。

Share