インドネシアで事業を展開する日系企業にとって、日本語でコミュニケーションできるインドネシア人材は重要な存在です。日本人駐在員とのコミュニケーション、日本本社との連携、日本人顧客への対応、通訳・翻訳など、日本語を必要とする業務は多岐にわたります。また、日本語人材が活躍する職種も、通訳・翻訳だけではありません。
営業、人事、経理・財務、購買、生産管理、品質管理、エンジニア、IT、カスタマーサービス、管理職など、日本語を一つのビジネススキルとして活用する人材も増えています。一方、インドネシアで日本語人材を採用しようとすると、
- 日本語ができる候補者がなかなか見つからない
- 日本語と専門スキルを兼ね備えた人材が少ない
- JLPT N1・N2を必須にすべきか分からない
- 日本語能力を面接でどのように確認すればよいか分からない
- 採用しても仕事内容やキャリアとのミスマッチが起こる
といった課題を感じる日系企業も少なくありません。しかし、日本語人材の採用では、単に「日本語が話せる人を探す」だけでは十分ではありません。重要なのは、そのポジションで日本語を何のために使うのかを明確にし、必要な日本語能力と実務能力を分けて採用要件を設計することです。
Peoplyeeでは、2013年から1,200社以上の日系企業のインドネシア採用を支援してきました。その経験をもとに、本記事では、インドネシアで日本語人材を採用する方法、日本語人材採用が難しい理由、採用時に確認すべきポイント、JLPTの考え方などを解説します。
この記事の結論
インドネシアで日本語人材を採用する際に重要なのは、次の5つです。
- 日本語を「何の業務で使うのか」を明確にする
- 必要以上に高い日本語レベルを求めない
- 日本語能力と実務能力を分けて評価する
- Job DescriptionとJob Profileを整理する
- 複数の採用チャネルを活用する
特に注意したいのが、「Japanese SpeakerだからJLPT N1またはN2が必要」と最初から決めてしまうことです。通訳・翻訳を専門とするポジションと、日本人上司との日常的なコミュニケーションで日本語を使用する営業職では、必要な日本語能力は異なります。そのため、資格から採用条件を決めるのではなく、仕事内容から必要な日本語レベルを逆算することが重要です。
インドネシアにおける日本語人材とは?
日本語人材とは、日本語能力を活用して業務を行うことができる人材を指します。インドネシアの日系企業では、日本人社員とインドネシア人社員、日本本社とインドネシア現地法人、あるいは日本人顧客と現地スタッフの間をつなぐ人材として、日本語人材が求められることがあります。以前は「日本語人材=通訳・翻訳」というイメージも強くありました。しかし、実際にはさまざまな職種で日本語能力が活用されています。例えば、
- 通訳・翻訳
- 営業
- Business Development
- 人事・総務
- 経理・財務
- 購買
- 生産管理
- 品質管理
- エンジニア
- IT
- カスタマーサービス
- 秘書
- 管理職
などです。そのため、日本語人材を採用する場合も、「日本語ができるか」だけで評価するのではなく、日本語+職務能力という考え方が重要になります。
インドネシアで日本語人材の採用が難しい4つの理由
1.日本語と専門スキルを同時に求めるため
日本語人材の採用が難しい理由の一つは、企業側が日本語能力だけではなく、さまざまな実務経験も同時に求めるためです。例えば営業職で、
- JLPT N2以上
- 英語ビジネスレベル
- 日系企業経験
- 製造業経験
- 法人営業経験5年以上
- マネジメント経験
- 特定地域に居住
- 希望給与が予算内
といった条件を設定すれば、すべてを満たす候補者は当然少なくなります。採用要件を作る際には、
Must:入社時点で必ず必要
Want:あれば望ましい
Can Develop:入社後に育成できる
の3つに分けて考えることが重要です。すべてをMustにしてしまうと、採用可能な候補者を必要以上に狭めてしまいます。
2.必要以上に高い日本語能力を求めている
日本語人材の求人では、「JLPT N1必須」「JLPT N2以上」と設定されることがあります。もちろん、日本語能力試験は日本語力を確認する一つの有効な指標です。しかし、JLPTのレベルと、実際の業務で必要なコミュニケーション能力は必ずしも一致しません。例えば、
「日本人上司から日常的な指示を受ける」という仕事と、「経営会議で同時通訳を行う」という仕事では、求められる日本語能力が大きく異なります。そのため、「Japanese SpeakerだからN2以上」と決めるのではなく、まず仕事内容を確認する必要があります。
3.日本語人材へ求人情報が届いていない
企業側からは、「インドネシアには日本語人材が少ない」という声を聞くことがあります。しかし、必ずしも人材そのものが存在しないとは限りません。企業の求人情報が日本語人材へ十分に届いていないこともあります。一般的な求人サイトだけではなく、
- 人材紹介会社
- ダイレクトリクルーティング
- 社員紹介
- SNS
- 大学・教育機関
- 日本語人材向けコミュニティ
など、複数の採用チャネルを活用することが重要です。特に日本語人材は、一般的な人材市場の中では比較的限定された層になるため、ターゲットに適したチャネルを選ぶ必要があります。
4.日本語能力を優先しすぎてしまう
日本語が流暢な候補者と面接すると、それだけで高く評価してしまうケースがあります。しかし、日本語能力が高いことと、その仕事で成果を出せることは別です。例えば営業職であれば、
- 顧客開拓
- ヒアリング
- 提案
- 交渉
- KPI管理
- 目標達成
といった能力も必要になります。管理職であれば、
- チームマネジメント
- 部下育成
- 問題解決
- 意思決定
- 他部門との調整
などの能力も重要です。日本語能力はJob Profileを構成する一つの要素として考えましょう。
インドネシアで日本語人材を採用する5つの方法
1.人材紹介会社を利用する
日本語人材の採用では、人材紹介会社を活用する方法があります。特に、
- 日本語+専門職経験が必要
- 管理職を採用したい
- 採用要件が限定されている
- 自社だけでは候補者を集めにくい
といった場合に有効です。人材紹介会社は、求人広告に応募している顕在層だけではなく、転職市場に登録している候補者へのアプローチも可能です。
2.求人サイトを利用する
求人サイトへJapanese Speakerの求人を掲載する方法です。応募数を集めやすい一方、日本語能力や職務経験が採用要件と合わない候補者から応募が集まる可能性もあります。
そのため、求人票には、
- 日本語を使用する業務
- 必要な日本語レベル
- 必須経験
- 歓迎経験
- 給与レンジ
- 勤務地
などを具体的に記載することが重要です。
3.ダイレクトリクルーティングを活用する
LinkedInなどを利用して、企業側から日本語人材へ直接アプローチする方法もあります。特に経験者や管理職など、転職サイトへ積極的に応募していない人材へアプローチできることがメリットです。一方で、候補者の検索、スカウト、返信対応などに一定の時間が必要になります。
4.社員紹介を活用する
既存社員から知人を紹介してもらうリファラル採用も、日本語人材の採用方法の一つです。日本語人材同士には、学校、大学、日本語コミュニティ、以前の勤務先などを通じたネットワークがある場合があります。ただし、社員紹介だからという理由だけで採用基準を緩めるのではなく、通常の候補者と同じ評価基準で選考することが重要です。
5.日本語教育機関・コミュニティとの接点を持つ
若手やポテンシャル人材を採用する場合、日本語学科のある大学、日本語学校、教育機関、日本語コミュニティなどとの接点を持つことも有効です。実務経験者をすぐに採用する方法とは異なりますが、中長期的に日本語人材を採用・育成する場合には選択肢になります。
日本語人材を採用する前に整理すべきJob Description
日本語人材を探す前に、まずJob Description(仕事内容)を整理しましょう。
例えば、次の内容です。
- ポジション名
- 仕事内容
- 責任範囲
- 上司
- 部下
- KPI
- 期待する成果
- 日本語を使用する具体的な場面
特に重要なのは、最後の「日本語を使用する場面」です。例えば、
「日本人Directorへの週次報告」
「日本本社とのメール対応」
「日本人顧客への営業」
「社内会議での逐次通訳」
「技術資料の翻訳」
では、必要な日本語能力が異なります。仕事内容が明確になることで、日本語能力についても適切な採用基準を設定しやすくなります。
日本語人材のJob Profileを設計する
Job Descriptionが「どのような仕事をするのか」を定義するものだとすれば、Job Profileは「どのような人がその仕事に適しているのか」を整理するものです。
例えば、Job Profileでは次のような項目を設定します。
- 職務経験
- 業界経験
- 専門知識
- スキル
- 日本語能力
- 英語能力
- コンピテンシー
- マネジメント経験
- 学歴・資格
ここでも、それぞれをMustとWantに分けることが重要です。例えば、
Must
- B2B営業経験3年以上
- 日本人顧客との会話が可能
- 基本的なExcelスキル
Want
- JLPT N2
- 日系企業経験
- 製造業経験
と整理することで、候補者の幅を広げることができます。
JLPT N1・N2は採用条件に必要?
日本語人材採用でよくある質問の一つが、「JLPT N1またはN2を必須にした方がよいですか?」というものです。結論としては、仕事内容によって異なります。例えば、専門的な翻訳や高度な通訳を行う仕事であれば、高い日本語能力が必要になります。一方、日本人上司との簡単なコミュニケーションが中心であれば、必ずしもN1・N2が必要とは限りません。また、JLPTは読む力や言語知識などを確認する有効な資格ですが、会話能力をそのまま保証するものではありません。そのため採用では、JLPT+実際のコミュニケーション確認という考え方がおすすめです。
面接で日本語能力を確認する方法
1.日本語で面接する
最も基本的な方法は、日本人面接官または日本語を話せる面接官が、日本語で質問することです。ただし、雑談だけではなく、実際の仕事内容に近い内容を質問することが重要です。例えば営業職であれば、
「現在担当している顧客について説明してください」「お客様からクレームを受けた場合、どのように対応しますか?」などを日本語で質問します。
2.メール作成テストを行う
日本語でのメール対応が多い仕事であれば、簡単なメール作成テストも有効です。例えば、「納期が3日遅れることを日本人顧客へ説明するメールを書いてください」といった実務に近い課題を設定します。
3.通訳・翻訳テストを行う
通訳・翻訳職の場合は、実際の仕事内容に近いテストを実施します。単なる日本語能力だけではなく、
- 正確性
- 内容理解
- 専門用語
- スピード
- 意図の理解
などを確認できます。
日本語人材を面接するときの評価ポイント
日本語人材の採用でも、日本語能力だけで判断しないことが重要です。例えば次のように評価項目を分けます。
日本語能力:実際の業務で必要な日本語コミュニケーションができるか。
職務能力:募集ポジションに必要な知識・経験・スキルを持っているか。
問題解決力:問題が発生した際、自ら状況を整理し、適切に対応できるか。
コミュニケーション能力:日本語が話せるだけではなく、相手の意図を理解し、必要な情報を適切に伝えられるか。
カルチャーフィット:企業のMission・Vision・Valueや働き方との相性があるか。
キャリア志向:日本語だけに依存するのではなく、職種としてどのようなキャリアを築きたいと考えているか。
面接では、これらの項目ごとに評価基準を設定すると、面接官による評価のばらつきを減らすことができます。
日本語人材の採用でよくある失敗
1.「日本語ができる=優秀」と考える
日本語能力は価値のあるスキルですが、職務能力とは分けて考える必要があります。日本語が流暢でも営業成果が出せるとは限らず、マネージャーとして適性があるとも限りません。
2.日本語レベルを高く設定しすぎる
実際にはN3程度でも業務ができるポジションにN1を求めれば、採用対象となる人材を大きく減らしてしまいます。
3.仕事内容を曖昧にしたまま採用する
「Japanese Speaker」とだけ定義して採用すると、入社後に通訳、翻訳、秘書、営業、総務など、さまざまな仕事を依頼することになりやすくなります。本人が想定していた仕事内容との違いが大きくなれば、離職にもつながる可能性があります。
4.日本語人材のキャリアを考えていない
入社後も長期間「通訳だけ」を任せ続けると、本人がキャリアの将来性を感じられなくなる場合があります。日本語は一つの能力として活かしながら、営業、人事、購買、エンジニア、マネジメントなどの専門性も伸ばせるキャリアを考えることが重要です。
インドネシアの日本語人材採用に関するよくある質問(FAQ)
Q. インドネシアで日本語人材を採用するにはどうすればよいですか?
A. 人材紹介会社、求人サイト、ダイレクトリクルーティング、社員紹介、日本語教育機関や日本語コミュニティなどを活用できます。採用要件が限定される場合は、一つのチャネルだけではなく複数の方法を組み合わせることがおすすめです。
Q. インドネシアで日本語人材を採用する場合、JLPT N2以上は必要ですか?
A. 必ずしも必要ではありません。実際の仕事内容で日本語をどのように使用するかによって必要なレベルは異なります。資格だけではなく、面接や実務テストを通じて業務に必要なコミュニケーション能力を確認しましょう。
Q. Japanese Speakerを採用するとき、何を重視すべきですか?
A. 日本語能力に加えて、職務経験、専門スキル、問題解決力、コミュニケーション能力、コンピテンシーなどを評価することが重要です。日本語能力だけで採用を決めないようにしましょう。
Q. 日本語人材が見つからない場合はどうすればよいですか?
A. まず採用要件を確認してください。日本語レベル、業界経験、職種経験、給与、勤務地などをすべてMust条件にしていると、対象となる候補者が極端に少なくなることがあります。MustとWantを分けて再設計することが重要です。
Q. 日本語人材の日本語能力はどのように確認すればよいですか?
A. 日本語面接に加えて、メール作成、ロールプレイ、通訳・翻訳テストなど、実際の仕事内容に近い方法で確認することがおすすめです。
Q. インドネシアで日本語人材を長期的に定着させるにはどうすればよいですか?
A. 日本語能力だけを評価するのではなく、専門スキルやマネジメント能力を伸ばせるキャリアを提供することが重要です。評価制度、昇進基準、研修、Job Descriptionなども明確にしましょう。
まとめ
インドネシアで日本語人材を採用する際に重要なのは、「日本語ができる人を探す」という考え方だけで採用を進めないことです。まず、
- どのような仕事を任せるのか
- 日本語をどのような場面で使うのか
- どの程度の日本語能力が必要なのか
- どのような実務経験が必要なのか
- 入社後にどのようなキャリアを提供するのか
を整理する必要があります。そのうえで、Job Description(仕事内容)とJob Profile(求める人物像)を明確にし、日本語能力と職務能力を分けて評価することが重要です。また、日本語人材が見つからない場合には、単純に「インドネシアには日本語人材がいない」と判断するのではなく、採用要件を厳しく設定しすぎていないか、候補者へ求人情報が届いているか、適切な採用チャネルを使えているかを確認しましょう。
Peoplyeeでは、2013年から1,200社以上の日系企業のインドネシア採用を支援してきた経験をもとに、仕事内容(Job Description)の整理、求める人物像(Job Profile)の設計、採用要件の策定、面接・評価基準の設計、人材紹介まで一貫してサポートしています。また、Peoplyeeでは、日本語人材向けのキャリアプラットフォーム「KyariGo」を運営するなど、インドネシアの日本語人材との接点拡大にも取り組んでいます。「インドネシアで日本語人材を採用したい」「日本語と専門スキルを持つ人材が見つからない」「Japanese Speakerの採用要件や日本語レベルをどのように設定すればよいか分からない」とお考えの企業様は、ぜひお気軽にPeoplyeeまでご相談ください。


