インドネシアへの進出や事業拡大を検討している企業から、
「インドネシアで人を採用したいが、まだ現地法人を設立していない」
「まず1人だけ採用して、市場調査を始めたい」
「現地法人を設立する前に、インドネシア市場をテストしたい」
「インドネシア人を雇用するためだけに会社を設立する必要があるのか?」
といった相談を受けることがあります。
このような場合に検討される選択肢の一つが、雇用代行サービス(EOR/Employer of Record)です。
EORを利用すると、EORサービスを提供するインドネシア企業が雇用主となり、雇用契約、給与計算、税務、人事・労務管理などを行うことで、海外企業がインドネシアに自社法人を持っていない段階でも、一定の条件のもとで現地人材を活用できる場合があります。
Peoplyeeでも、インドネシアでのEORサービスを提供しており、現地法人・駐在事務所を設立する前のトライアル進出や、海外展開をスピードアップしたい企業などにご利用いただいています。
本記事では、インドネシアのEORとは何か、どのような仕組みなのか、メリット、人材紹介やアウトソーシングとの違い、利用する際の注意点について、日本企業向けに分かりやすく解説します。
この記事の結論
EOR(Employer of Record/雇用代行)サービスとは、クライント企業などに代わって、現地の企業が雇用主となり、人材の雇用や給与・税務・人事労務などを管理するサービスです。インドネシアでEORを利用する主なメリットは、次の3つです。
- 現地法人を設立する前に、少人数から事業をスタートできる
- インドネシア進出をスピードアップし、市場性をテストできる
- 給与・税務・人事労務などの負担を減らせる
一方で、EORを利用すれば、現地法人なしでインドネシアにおいて自由にあらゆる事業活動ができるという意味ではありません。インドネシアでは2026年4月にアウトソーシングに関するPermenaker No.7/2026が施行されており、EORという名称そのものが独立した制度として規定されているわけではありません。そのため、EORを利用する際には、実際に行う業務や契約スキームがインドネシアの法令に適合しているかを確認することが重要です。
EOR(Employer of Record/雇用代行サービス)とは?
EORは、Employer of Recordの略称で、日本語では一般的に「雇用代行サービス」などと呼ばれます。EORでは、EOR事業者が雇用契約上の雇用主となり、雇用契約、給与計算、税務、社会保障、人事・労務管理など、社員の雇用に必要な業務を行います。一方、クライアント企業は、契約上認められた範囲で、実際の仕事内容や日々の業務を管理します。そのため、海外企業がまだインドネシアに自社法人を設立していない段階でも、一定の条件のもとで現地人材を活用できる場合があります。
インドネシアのEORはどのような仕組み?
一般的なEORでは、主に次の3者が関係します。
1.クライアント企業:日本企業など、インドネシアで人材を活用したい企業です。
2.EOR事業者:インドネシアで社員と雇用契約を締結し、雇用主となる企業です。
3.社員:インドネシアで実際に仕事をする人材です。
例えば、日本企業A社がインドネシアで営業担当者を採用したいものの、まだインドネシア法人を設立していないとします。利用可能な法的スキームであることを確認したうえでEORを利用する場合、EOR事業者が社員と雇用契約を締結し、給与計算、給与支払い、税務、社会保障、人事・労務管理などを行います。一方、クライアント企業は、契約上認められた範囲で、仕事内容、Target、KPI、日々の業務などを管理します。つまり、基本的な役割分担は、
雇用契約・給与・税務などの雇用管理 → EOR事業者
仕事内容・Target・KPIなどの業務管理 → クライアント企業
となります。この仕組みにより、海外企業は自社で現地法人を設立する前の段階でも、一定の条件のもとでインドネシア人材を活用できる場合があります。

インドネシアでEORが利用される理由
インドネシアへ進出する場合、長期的には現地法人を設立して事業を行う企業も多くあります。
しかし、「インドネシア市場で本当にビジネスが成立するのか分からない」という段階で、いきなり法人を設立することにハードルを感じる企業もあります。例えば、
「まず営業担当者を1人採用して市場を調査したい」
「既存のインドネシア顧客をサポートする担当者が1人欲しい」
「法人設立前に現地責任者候補を採用したい」
「半年から1年程度、市場性を確認したい」
「インドネシアでITエンジニアを採用し、開発チームを作りたい」
といったケースです。このような少人数でのトライアル進出は、EORが検討される代表的なケースです。最初から法人設立や大規模な採用を行うのではなく、まず現地人材を採用し、市場性を確認したうえで本格進出を判断するという方法です。
インドネシアでEORを利用する3つのメリット
1.現地法人を設立する前に、少人数から事業をスタートできる
EORの大きなメリットは、企業自身がインドネシア法人を持っていない段階でも、EOR事業者を雇用主とすることで、一定の条件のもとで現地人材を雇用できることです。例えば、
「まず営業担当者を1人採用したい」
「ITエンジニアを数名採用して開発チームを作りたい」
「現地責任者候補を採用したい」
といったケースです。最初から現地法人を設立して大きな組織を作るのではなく、まず1人~数名からスタートし、事業の成長に合わせて組織を拡大できることがEORのメリットです。
2.インドネシア進出をスピードアップできる
現地法人を設立する場合には、会社設立だけではなく、各種登録、銀行、人事・給与体制など、事業を開始するための準備が必要になります。一方、EORでは既存の現地法人が雇用主となるため、ゼロから雇用体制を構築する必要がありません。そのため、法人設立を待つことなく、一定の条件のもとで人材を採用し、インドネシアでの活動を始めることができます。特に、「まず6か月~1年間市場をテストし、事業性を確認してから本格進出を判断したい」という企業にとって、EORは選択肢の一つになります。市場性が確認できた段階で、現地法人を設立して直接雇用へ切り替えるという方法も考えられます。
3.給与・税務・人事労務の負担を減らせる
インドネシアで社員を雇用すると、毎月の給与を支払うだけではありません。雇用契約、給与計算、税務、社会保障、人事・労務管理など、さまざまな業務が発生します。EORでは、こうした雇用に関するバックオフィス業務をEOR事業者が担当します。そのため、進出初期からインドネシアに人事担当者を配置したり、自社で給与・労務管理の体制を一から構築したりする必要がなく、企業は営業、顧客開拓、開発など、本来の事業活動にリソースを集中しやすくなります。
EORと人材紹介会社は何が違う?
EORと人材紹介会社は混同されることがありますが、役割が異なります。人材紹介会社は、企業に候補者を紹介します。採用が決まった後は、原則としてクライアント企業と候補者が直接雇用契約を締結します。一方、EORでは、EOR事業者が雇用主となります。つまり、
人材紹介:候補者を探す → クライアント企業が雇用
EOR:EOR事業者が雇用 → クライアント企業の業務を担当
という違いがあります。そのため、インドネシア法人をすでに持っており、自社で直接社員を雇用できる企業であれば、人材紹介を利用する方法が一般的です。一方、「まだインドネシア法人がないが、人材を採用したい」という場合には、EORが選択肢になる可能性があります。
Peoplyeeでは人材紹介とEORの両方を提供しているため、候補者探しから採用、雇用代行まで一貫してサポートすることができます。
EORとアウトソーシングの違いは?
EORとアウトソーシングは似た仕組みに見えるため、混同されることがあります。一般的な考え方として、EORは海外企業が現地法人を持っていない国で人材を雇用する際に利用されることが多く、雇用契約、給与、税務、人事管理などの「雇用主としての機能」を提供します。
一方、アウトソーシングは、企業が特定の業務を外部企業へ委託し、外部企業がその業務を遂行する仕組みです。ただし、インドネシアではこの違いを名称だけで判断することはできません。2026年4月30日に施行されたPermenaker No.7/2026では、アウトソーシング(Pekerjaan Alih Daya)の対象となる業務や契約、事業者の義務などが規定されています。また、インドネシアの法令には「EOR」という独立した雇用形態やライセンス区分が明確に設けられているわけではありません。そのため、サービス名が「EOR」であっても、実際の契約関係や仕事内容によっては、アウトソーシングに関する規制との関係を確認する必要があります。重要なのは、「EORという名前だから問題ない」と判断するのではなく、「実際にどのような契約・雇用・業務を行うのか」を確認することです。
インドネシアでEORを利用するときの注意点
EORにはメリットがありますが、すべての企業・業務に適しているわけではありません。
1.EORで対応できる業務か確認する
最も重要なのは、採用した人材が実際にどのような仕事をするのかです。そのため、EORを検討する場合には、「どのポジションを採用するのか」だけではなく、「その社員が実際に何をするのか」まで確認する必要があります。
2.EORを使えば自由に事業活動ができるわけではない
これは非常に重要です。EORを利用して社員を雇用できることと、海外企業がインドネシア国内で自由に事業活動を行えることは同じではありません。インドネシアで行う事業内容によっては、法人設立、事業許認可、税務上の検討などが必要になる可能性があります。そのため、「法人を設立したくないから、ずっとEORだけで事業をする」という判断ではなく、実際の事業内容や将来の計画を踏まえて、EORと現地法人設立のどちらが適しているかを検討する必要があります。
3.長期利用ではコストを比較する
EORは、現地法人を設立する前に少人数からインドネシアで事業を始めたい企業にとって、便利な選択肢の一つです。一方で、EORを利用する場合には、社員の給与や法定費用などに加えて、EOR事業者へのサービス費用が発生します。そのため、採用人数が増えたり、インドネシアで長期的に事業を行うことが決まったりした場合には、EORを継続する場合と、現地法人を設立して社員を直接雇用する場合のコストを比較することが重要です。
EORが向いている企業とは?
EORは、特に現地法人を設立する前の段階からインドネシアで人材を採用し、事業をスタートしたい企業に適した選択肢の一つです。具体的には、次のような企業で活用が検討されます。
1.インドネシアへ初めて進出する企業
インドネシアへの進出を検討しているものの、まだ市場性が分からず、最初から現地法人を設立することにハードルを感じている企業です。EORを活用することで、一定の条件のもとで現地法人を設立する前から人材を採用し、顧客開拓や市場調査などを始めることができます。まずインドネシアで事業をスタートし、市場性を確認したうえで本格進出や現地法人設立を判断するという方法です。
2.少人数からスピーディーに事業を始めたい企業
「まず営業担当者を1人採用したい」「事業開発担当者を数名配置したい」など、大規模な組織ではなく、少人数からインドネシアで事業を始めたい企業です。現地法人の設立や雇用体制の構築を待たずに人材採用を進められるため、インドネシアでの事業開始までの時間を短縮できる可能性があります。特に、すでにインドネシアに顧客やビジネス機会があり、早く現地人材を配置したい企業にとって、EORは選択肢の一つになります。
3.人事・給与業務を外部へ任せたい企業
インドネシアで社員を雇用すると、給与計算だけでなく、雇用契約、税務、社会保障、人事・労務管理など、さまざまな業務が発生します。特に進出初期は、社員数が少なく、人事担当者を配置するほどの組織規模ではないケースもあります。EOR事業者へ雇用関連業務を任せることで、自社で人事・給与管理の体制を一から構築することなく、本来の事業活動にリソースを集中しやすくなります。
4.インドネシアで開発チームを作りたい企業
EORは、営業や事業開発だけでなく、インドネシアのITエンジニアなどを採用し、日本や海外と連携する開発チームを作りたい企業でも検討されます。例えば、最初からインドネシアに開発法人を設立するのではなく、まず少人数のITエンジニアを採用し、開発チームを立ち上げるという活用方法です。事業やチームの拡大に合わせて採用人数を増やし、一定の規模になった段階で現地法人の設立を検討することもできます。
PeoplyeeのEOR(雇用代行)サービス
Peoplyeeでは、インドネシアへ進出する日本企業向けにEOR(Employer of Record/雇用代行)サービスを提供しています。Peoplyeeでは、単に社員を雇用するだけではなく、採用から雇用、給与、人事・労務まで一貫してサポートしています。
1.採用支援・雇用代行
Peoplyeeはインドネシアで人材紹介事業も行っているため、候補者のご提案 → 選考 → 採用決定 → 雇用代行まで一気通貫でサポートすることができます。「インドネシアで人材を採用したいが、候補者もまだ決まっていない」という段階からご相談いただけます。一方、すでに採用したい人材が決まっている場合には、雇用代行のみのご相談も可能です。
2.給与・税務管理
社員の給与計算、控除額の計算、給与振込、税務納付など、毎月発生する給与関連業務をサポートします。海外からインドネシアの給与制度や税務を一から理解し、毎月管理することは簡単ではありません。こうしたバックオフィス業務をEOR事業者へ任せることで、クライアント企業は本来の事業に集中しやすくなります。
3.人事・労務対応
インドネシアの法令に沿った雇用、人事・労務、納税申告など、EORに伴う各種手続きを現地の専門スタッフがサポートします。海外進出では、人材を採用することだけではなく、採用した後にインドネシアの法令に沿って適切に雇用・管理することも重要です。Peoplyeeでは、EORを単なる「給与代行サービス」ではなく、インドネシア進出における採用から雇用、人事・労務管理までを支援するサービスとして提供しています。
インドネシアのEORに関するよくある質問(FAQ)
Q. EORとは何ですか?
A. EORはEmployer of Recordの略称で、日本語では「雇用代行サービス」などと呼ばれます。一般的には、EOR事業者が雇用契約上の雇用主となり、雇用契約、給与、税務、人事・労務などを管理するサービスを指します。
Q. インドネシア法人がなくてもEORを利用できますか?
A. EORは、現地法人を持っていない海外企業が現地人材を活用する際に検討されるサービスです。ただし、実際に可能な契約・業務は、インドネシアの法令や業務内容によって異なるため、事前確認が必要です。
Q. EORを使えばインドネシアで自由にビジネスできますか?
A. いいえ。EORを通じて人材を雇用することと、インドネシアで事業を行うための法人・事業許認可は別の問題です。実際に行う事業内容によって、必要な法人形態や許認可を確認する必要があります。
Q. EORと人材紹介の違いは何ですか?
A. 人材紹介では、紹介会社が候補者を紹介し、採用後はクライアント企業が雇用主になります。一方、EORではEOR事業者が雇用主となり、給与・税務・人事労務などを管理します。
Q. EORとアウトソーシングは同じですか?
A. 一般的なサービス概念としては異なりますが、インドネシアではEORという名称の独立した雇用制度が明確に規定されているわけではありません。そのため、実際のEORスキームについて、アウトソーシング規制を含む現行法令との関係を確認する必要があります。
Q. EORはどのくらいの人数から利用できますか?
A. EORは少人数での海外進出やトライアル進出でも利用されるサービスです。Peoplyeeでも、企業の採用人数、仕事内容、進出計画などを確認したうえで、利用可能なスキームをご案内しています。
Q. ITエンジニアの採用にもEORを利用できますか?
A. ITエンジニアなどを採用し、インドネシアで開発チームを構築する際にもEORが検討されることがあります。
Q. 採用する人材がまだ決まっていなくても相談できますか?
A. はい。Peoplyeeでは人材紹介とEORの両方を提供しているため、候補者の採用から雇用代行まで一貫してご相談いただけます。また、採用する人材がすでに決まっている場合には、雇用代行のみのご相談も可能です。
まとめ
EOR(Employer of Record/雇用代行サービス)は、インドネシアにまだ現地法人を持っていない企業が、現地人材の活用を検討する際の選択肢の一つです。特に、
「まず1人採用したい」
「インドネシア市場をテストしたい」
「法人設立前に市場調査や事業開発を始めたい」
「インドネシア進出をスピードアップしたい」
「インドネシアで開発チームを作りたい」
といった企業にとって、検討する価値があります。EORを利用することで、現地法人を設立する前の段階から、一定の条件のもとでインドネシア人材を雇用し、事業をスタートできる可能性があります。一方で、EORを利用すれば、現地法人なしであらゆる事業や職種に対応できるというわけではありません。2026年にはインドネシアのアウトソーシングに関する新しい規則も施行されており、EORというサービス名称だけではなく、実際の契約関係、仕事内容、雇用形態が現行法令に適合しているかを確認することが重要です。
また、事業が拡大し、採用人数が増えてきた場合には、EORを継続するのか、現地法人を設立して直接雇用へ切り替えるのかを改めて検討する必要があります。つまり、EORは単に「現地法人を作らずに済むサービス」と考えるのではなく、インドネシア進出の初期フェーズをスピーディーかつ柔軟に進めるための選択肢の一つとして考えるとよいでしょう。
Peoplyeeでは、インドネシアでの人材紹介からEORによる雇用代行、給与・税務管理、人事・労務対応まで一貫してサポートしています。「まだインドネシア法人はないが、現地人材を採用したい」「まず1人からインドネシア進出を始めたい」「インドネシアでITエンジニアなどのチームを作りたい」「EORと現地法人設立のどちらが自社に合っているか分からない」という企業様は、Peoplyeeまでお気軽にご相談ください。


