近年、インドネシアの採用市場では、Z世代(Gen Z)が新卒採用や若手採用の中心となっています。企業にとっては、これまで以上にZ世代の価値観や就職活動の特徴を理解した採用活動が求められています。一方で、多くの日系企業からは、
- 若手の応募が集まりにくい
- 内定承諾につながらない
- 入社後の早期離職が発生する
といった相談を受けることがあります。こうした課題は、「Z世代だから」という理由だけで説明できるものではありません。仕事内容の伝え方、企業ブランド、Candidate Experience(候補者体験)、採用プロセスなど、企業側の採用活動が現在の求職者の期待と合っていないことも少なくありません。Peoplyeeでは、2013年からインドネシアで日系企業を中心に採用支援を行ってきました。その中で感じるのは、Z世代の採用では従来と同じ方法だけでは十分な成果を得られない場面が増えているということです。
本記事では、インドネシアでZ世代の採用を進める際に、日系企業が押さえておきたい4つの採用戦略について解説します。
この記事の結論
インドネシアでは、Z世代(Gen Z)が採用市場の中心となりつつあり、企業には採用活動の見直しが求められています。Z世代は給与だけでなく、
- 仕事内容
- 成長機会
- 働き方
- 企業文化
- Candidate Experience(候補者体験)
なども含めて応募先を比較する傾向があります。そのため、求人票を掲載するだけでは十分とは言えません。仕事内容を分かりやすく伝え、採用プロセスを改善し、企業の魅力を継続的に発信することで、求める人物像に合う候補者から選ばれる可能性を高めることができます。
インドネシアのZ世代(Gen Z)とは
Z世代(Gen Z)とは、一般的に1990年代後半から2010年代前半頃に生まれた世代を指します。幼少期からインターネットやスマートフォン、SNSが身近にある環境で育ったことから、「デジタルネイティブ」と呼ばれることもあります。インドネシアは若年人口が多く、現在では新卒採用や若手採用の多くをZ世代が占めています。そのため、この世代を理解することは、今後の日系企業の採用活動において重要なテーマの一つです。また、Z世代は求人情報を探す際にも、求人サイトだけではなく、
- TikTok
- 企業ホームページ
- 社員のSNS
- 口コミサイト
など、複数の情報源を活用して企業を比較する傾向があります。さらに、企業を選ぶ際には給与だけではなく、次のような点も重視する傾向があります。
- 入社後にどのような仕事を担当するのか
- 新しい知識やスキルを身につけられるか
- キャリアパスが明確か
- 上司やチームと協力しながら働ける環境か
- 企業の考え方や文化に共感できるか
- 柔軟な働き方ができるか
もちろん、すべてのZ世代が同じ価値観を持っているわけではありません。しかし、応募前に企業について多くの情報を収集し、自分に合った職場かどうかを慎重に判断する候補者が増えていることは、採用活動において意識しておきたい変化と言えるでしょう。
日系企業がZ世代採用に苦戦する5つの理由
日系企業がZ世代の採用で課題を感じる背景には、複数の要因があります。特に次のような点は、応募数や選考、内定承諾にも影響する可能性があります。
- 企業ブランドや情報発信が十分ではない
- Candidate Experience(候補者体験)が十分に設計されていない
- 選考や社内承認に時間がかかる
- キャリアパスや成長機会を十分に伝えられていない
- 仕事内容(Job Description)や求める人物像(Job Profile)が明確ではない
これらのテーマについては、それぞれ以下の記事で詳しく解説しています。
- Employer Branding(採用ブランディング)
- Candidate Experience(候補者体験)
- Job Description(仕事内容)
- Job Profile(求める人物像)
- 採用プロセス改善
インドネシアでZ世代を採用する4つの戦略
1. Candidate Experience(候補者体験)とコミュニケーションを改善する
Z世代の採用では、仕事内容や給与だけでなく、応募から入社までのCandidate Experience(候補者体験)も企業選びに影響する可能性があります。候補者は、採用プロセスを通じて「この会社はどのような組織なのか」を判断しています。例えば、次のような点は企業への印象に影響します。
- 応募後の返信が迅速か
- 面接日程の調整がスムーズか
- 面接官の説明が分かりやすいか
- 選考全体の流れが事前に共有されているか
- 結果連絡までのおおよその時期が伝えられているか
- 問い合わせに丁寧に対応しているか
一方で、
- 応募後に連絡がない
- 面接日程が何度も変更される
- 面接官によって説明内容が異なる
- 次の選考がいつ行われるのか分からない
といった状況は、不安や不信感につながることがあります。もちろん、採用には社内承認や日程調整など一定の時間が必要です。しかし、判断に時間がかかる場合でも、
- 現在どの段階なのか
- 次回はいつ頃連絡する予定なのか
を伝えるだけでも、候補者は安心して選考を進めやすくなりますCandidate Experienceを改善することは、Z世代だけでなく、すべての候補者にとって望ましい採用活動につながります。
2. 世代ではなく、具体的な行動や経験を評価する
Z世代採用では、
- 「Z世代はすぐ辞める」
- 「コミュニケーションが苦手」
- 「スマートフォンばかり見ている」
といった世代に対する先入観で評価しないことが重要です。同じZ世代でも、
- 経験
- スキル
- 価値観
- キャリアの考え方
は大きく異なります。そのため、採用では年齢や世代ではなく、その候補者がどのような行動を取ってきたかを確認することが大切です。例えば、面接では次のような点を確認できます。
- 新しい知識やスキルをどのように学んできたか
- 課題が発生した際にどのように対応したか
- 周囲とどのように協力して仕事を進めたか
- フィードバックを受けて改善した経験があるか
- 異なる文化や価値観を持つ人とどのように仕事をしたか
このような具体的な行動事例を確認することで、実際の業務で求められる能力を評価しやすくなります。また、日系企業では、
- 「日系企業に合いそう」
- 「素直そう」
- 「日本人と働きやすそう」
といった印象で評価してしまうことがあります。しかし、これらは面接官によって判断基準が変わりやすく、公平な評価が難しくなる可能性があります。例えば、「異文化環境で働けるか」を確認したい場合は、次のような質問の方が具体的です。
- 異なる価値観を持つメンバーと仕事をした経験はありますか。
- 意見が対立したとき、どのように解決しましたか。
- 上司や顧客との認識の違いをどのように調整しましたか。
- 海外メンバーや他部署との協働で工夫したことはありますか。
このように、印象ではなく過去の行動や経験を確認することで、面接官による評価のばらつきを抑えやすくなります。また、評価基準を事前に整理し、すべての候補者に共通する質問を行う構造化面接を取り入れることで、公平性の高い採用につながります。
3. スピーディーで透明性の高い採用プロセスを構築する
インドネシアでは、Z世代の候補者の中にも複数の企業へ同時に応募しながら転職活動や就職活動を進めている人が少なくありません。そのため、採用活動では「誰を採用するか」だけでなく、「どれだけスムーズに意思決定できるか」も重要になります。一方、日系企業では、
- 現地人事
- 配属部門
- 日本人責任者
- 現地法人経営層
- 日本本社
など、複数の関係者が採用に関わるケースも多くあります。慎重に採用を進めることは重要ですが、役割分担や承認フローが明確でないと、選考が長期化する原因になることがあります。採用開始前には、少なくとも次の項目を整理しておきましょう。
- 書類選考の担当者
- 面接官
- 最終決定者
- 給与条件の承認者
- 各選考段階の回答期限
- 候補者への連絡担当者
また、候補者に対しても、
- 選考は何回あるのか
- それぞれの面接で何を確認するのか
- 結果はいつ頃連絡する予定なのか
を事前に共有することで、安心して選考を進めてもらいやすくなります。採用スピードを上げることだけが目的ではありません。候補者が現在の状況を理解できる、透明性の高い採用プロセスを設計することが重要です。
4. 仕事内容・成長機会・企業文化を具体的に伝える
Z世代は給与だけで企業を選ぶわけではありません。もちろん待遇は重要ですが、それに加えて、
- どのような仕事を担当するのか
- どのような経験を積めるのか
- 将来どのようなキャリアを描けるのか
も重視する候補者が増えています。そのため、求人票や採用ページでは、募集条件だけではなく、入社後のイメージを具体的に伝えることが重要です。例えば、次のような情報を掲載すると、候補者は仕事内容を理解しやすくなります。
- 入社後に担当する業務
- 一日の仕事の流れ
- 配属先の組織体制
- 一緒に働くメンバー
- 使用する言語
- 身につけられるスキル
- キャリアパス
- 評価制度
- 研修制度
また、企業理念やミッションを紹介するだけではなく、「この仕事が会社や社会へどのような価値を生み出すのか」まで伝えることで、候補者は仕事の目的をイメージしやすくなります。企業文化についても、「風通しが良い」「成長できる」といった抽象的な表現だけでは十分とは言えません。例えば、
- 部署を越えてプロジェクトへ参加できる
- 若手でも改善提案ができる
- 定期的に1on1を実施している
- 社内研修や資格取得支援がある
など、実際の制度や取り組みを紹介する方が、候補者は働く姿を具体的にイメージできます。
採用はオンボーディングまで設計する
採用活動は、内定承諾で終わるものではありません。特にZ世代では、入社後のオンボーディングまで含めて採用プロセスとして考えることが重要です。例えば、
- 入社前の連絡
- 入社初日の受け入れ準備
- 研修計画
- 上司との面談
- メンター制度
- 定期的なフォロー面談
などを計画的に実施することで、新しい環境へ適応しやすくなることが期待できます。また、求人や面接で説明した仕事内容やキャリアパスと、実際の業務内容に大きな違いがあると、早期離職につながる可能性もあります。採用担当者だけではなく、配属部門や上司も含めて、採用からオンボーディングまで一貫した体制を整えることが重要です。
Z世代採用チェックリスト
採用活動を見直す際は、次の項目を確認してみましょう。
□ 仕事内容(Job Description)が整理されている
□ 求める人物像(Job Profile)が明確になっている
□ キャリアパスを具体的に説明できる
□ 企業ホームページやSNSの情報が最新になっている
□ 選考スケジュールを事前に案内している
□ 応募後24〜48時間以内を目安に初回連絡を行っている
□ 面接回数や承認フローを見直している
□ Candidate Experience(候補者体験)を定期的に振り返っている
□ オンボーディングまで含めた採用プロセスを設計している
□ 採用後の定着状況も含めてKPIを確認している
Z世代(Gen Z)採用に関するよくある質問(FAQ)
Q. Z世代(Gen Z)は給与だけを重視するのでしょうか?
A. 必ずしもそうではありません。給与は重要な要素の一つですが、それに加えて仕事内容、成長機会、企業文化、働き方、キャリアパス、Candidate Experience(候補者体験)などを総合的に比較して応募先を選ぶ候補者も多く見られます。
Q. インドネシアではSNSを活用した採用は重要ですか?
A. はい。多くの候補者は、求人サイトだけでなく、企業ホームページやLinkedIn、Instagramなども参考にしています。そのため、求人情報だけではなく、企業文化や社員の働く様子なども継続的に発信することが、応募前の企業理解につながる可能性があります。
Q. Z世代を採用する際に最も重要なことは何ですか?
A. 世代ごとのイメージだけで判断するのではなく、一人ひとりの経験や行動を客観的に評価することです。また、仕事内容(Job Description)、求める人物像(Job Profile)、キャリアパスを分かりやすく伝え、透明性の高い採用プロセスを設計することも重要です。
Q. 日系企業でもZ世代採用を成功させることはできますか?
A. はい、可能です。ただし、日本本社と同じ採用手法をそのまま適用するのではなく、インドネシアの採用市場や候補者の情報収集方法、価値観を理解したうえで採用活動を設計することが重要です。
Q. Z世代向けに採用制度そのものを変える必要がありますか?
A. 必ずしも制度全体を変更する必要はありません。一方で、Candidate Experience(候補者体験)の改善、仕事内容やキャリアパスの情報提供、迅速なコミュニケーションなどは、Z世代に限らず多くの候補者にとって望ましい取り組みと言えます。
まとめ
インドネシアでは、Z世代(Gen Z)が採用市場の中心となりつつあり、企業には従来以上に候補者視点を取り入れた採用活動が求められています。本記事で紹介した4つの戦略は次のとおりです。
- Candidate Experience(候補者体験)とコミュニケーションを改善する
- 世代ではなく、具体的な行動や経験を評価する
- スピーディーで透明性の高い採用プロセスを構築する
- 仕事内容・成長機会・企業文化を具体的に伝える
これらは、Z世代だけに特化した施策ではありません。求める人物像に合う候補者に対して、自社の魅力を適切に伝え、公平で分かりやすい採用活動を行うための基本的な考え方でもあります。また、採用活動は内定承諾で終わるものではありません。オンボーディングまで含めて採用プロセスとして設計し、入社後の活躍や定着まで見据えることが重要です。
インドネシアの採用市場は今後も変化していくことが予想されます。企業側も継続的に採用活動を見直し、仕事内容(Job Description)、求める人物像(Job Profile)、Candidate Experience(候補者体験)、企業ブランドなどを改善し続けることが、採用競争力の向上につながるでしょう。
Peoplyeeでは、2013年からインドネシアで日系企業を中心に、人材紹介をはじめ、人事システム(HRIS)の導入支援や人事・採用に関するさまざまな課題解決をサポートしています。インドネシアで採用活動や人事制度、人事業務の改善をご検討中の企業様は、ぜひお気軽にPeoplyeeまでご相談ください。


