採用面接では、応募者の経験やスキルだけでなく、「誠実性(インテグリティ)」を確認することも重要です。特に、経理・財務・購買・人事など、機密情報や会社の資産を扱う職種ではもちろん、営業、管理職、エンジニアなど、あらゆる職種において誠実性は重要な評価項目の一つです。採用担当者やHiring Managerが誠実性に関する質問をする目的は、単に「正直な人か」を確認することではありません。仕事で問題が発生したときに事実を正確に報告できるか、自分のミスを認められるか、会社のルールを守れるか、自分にとって不利な状況でも責任ある判断ができるかなど、実際の仕事における判断基準や行動を確認することが重要です。特にインドネシアで事業を行う日系企業では、日本人マネジメントとインドネシア人社員が異なる文化や価値観の中で協働するケースも多くあります。そのため、何を正しい行動と考え、問題が発生した際にどのように報告・相談・判断するのかを採用段階で確認しておくことが重要です。
Peoplyeeでは、2013年から1,200社以上の日系企業のインドネシア採用を支援してきました。その経験からも、応募者の誠実性を見極めるためには、「あなたは誠実ですか?」と直接確認するだけでは十分ではありません。過去の具体的な経験を質問し、そのときに何を考え、どのような判断を行い、実際にどのような行動を取ったのかを深掘りする必要があります。
本記事では、インドネシア採用で応募者の誠実性(インテグリティ)を見極めるための面接質問10選と、回答を評価するときのポイントについて解説します。
この記事の結論
誠実性は、「正直です」「ルールを守ります」といった自己申告だけでは判断できません。採用面接では、応募者の過去の具体的な行動から、主に次の点を確認することが重要です。
- 自分に不利な情報でも正確に報告できるか
- 自分のミスや責任を認められるか
- 会社のルールやコンプライアンスを守れるか
- 他者の成果を正当に評価できるか
- 利益と倫理が衝突した場合に適切な判断ができるか
- 問題を隠さず、必要な相手へ報告・相談できるか
- 発言と実際の行動に一貫性があるか
面接官は回答の「正しさ」だけを見るのではなく、「なぜその判断をしたのか」「実際に何をしたのか」「結果としてどうなったのか」まで確認しましょう。STAR法(Situation・Task・Action・Result)を活用して深掘りすることで、応募者の価値観だけでなく、実際の行動特性をより具体的に評価できます。
誠実性(インテグリティ)とは
ビジネスにおける誠実性(Integrity)とは、単に嘘をつかないことだけを意味するものではありません。会社のルールや社会的な規範を守り、自分の発言や行動に責任を持ち、状況によって態度を変えることなく、一貫した判断や行動を取ることも含まれます。例えば、次のような行動は誠実性を判断する材料になります。
- 自分のミスを隠さず報告する
- 顧客に都合の悪い情報も正確に伝える
- 他人の成果を自分の成果として扱わない
- 機密情報を適切に管理する
- 約束できないことを安易に約束しない
- 会社のルールに反する行為を求められた場合に適切に対応する
- 問題を発見したときに放置しない
誠実性は、経理や財務のような会社資産を扱う職種だけに必要なものではありません。営業であれば顧客への説明、マネージャーであれば部下の評価、採用担当者であれば候補者情報の取り扱いなど、それぞれの職種で誠実性が求められる場面があります。そのため、募集ポジションでどのような誠実性が求められるのかを事前に整理しておくことが重要です。
なぜ採用面接で誠実性を確認するのか
1.責任ある行動を取れる人材かを確認するため
企業活動では、すべての行動を上司が確認できるわけではありません。社員自身が状況を判断し、会社のルールや職務上の責任に沿って行動する必要があります。特に、機密情報、会社資産、顧客情報、個人情報、予算などを扱う職種では、高い誠実性が求められます。面接では、過去に責任のある状況でどのような判断をしたのかを確認しましょう。
2.問題が発生した際の行動を確認するため
誠実性が表れやすいのは、仕事が順調なときではなく、問題が発生したときです。例えば、自分がミスをしたときに、
「隠そうとしたのか」
「すぐに報告したのか」
「誰かに責任を転嫁したのか」
「原因と再発防止策まで考えたのか」
によって、その人の仕事に対する姿勢が見えてきます。そのため、成功体験だけでなく、失敗やトラブルについて質問することも重要です。
3.長期的に信頼できる人材かを確認するため
組織で仕事を進めるためには、社員同士の信頼関係が必要です。約束を守る、正確な情報を共有する、自分の責任を果たす、他者を公平に評価するといった行動が積み重なることで、周囲からの信頼につながります。特に管理職やリーダー候補の場合、誠実性は本人だけの問題ではありません。マネージャーの判断や行動は、部下やチームの組織文化にも影響します。
面接で応募者の誠実性を見極める3つのポイント
1.抽象的な回答ではなく、具体的な経験を確認する
「誠実さを大切にしています」、「私はルールを守ります」という回答だけでは、実際の行動は判断できません。「実際にそのような判断をした経験を教えてください」と追加質問し、具体的な事実を確認しましょう。
2.応募者にとって不利だった状況について確認する
自分にメリットがある状況で正しい行動を取ることと、自分に不利益が発生する状況で正しい行動を取ることでは、判断の難しさが異なります。例えば、自分のミスを報告した経験や、自分が評価されている状況で他者の貢献を説明した経験などを質問すると、より具体的な行動を確認できます。
3.STAR法で行動を深掘りする
応募者の回答は、STAR法を使って確認すると整理しやすくなります。
Situation: どのような状況だったのか Task: 本人にはどのような役割や責任があったのか Action: 本人が具体的に何をしたのか Result: その結果、どうなったのか
特に重要なのはActionです。チームとして何をしたかだけではなく、「あなた自身は何をしましたか?」と確認し、本人の判断と行動を明確にしましょう。
誠実性を見極める面接質問10選
1.仕事でミスをした経験と、そのときどのように対応したか教えてください
この質問で確認したいポイント
自分のミスを認め、必要な相手へ報告し、問題解決と再発防止まで行動できるかを確認します。
回答例
「以前、顧客へ提出する資料の数値を誤って入力してしまったことがあります。提出後に自分でミスに気づいたため、すぐに上司へ報告し、正しい資料を作成しました。その後、顧客にも事情を説明して修正版を提出しました。同じミスを繰り返さないよう、提出前に元データと資料を照合するチェックリストを作成しました。」
評価ポイント
- ミスを隠していないか
- 迅速に報告しているか
- 他者へ責任転嫁していないか
- 問題解決まで行動しているか
- 再発防止まで考えているか
2.自分にとって不利になる事実を、上司や顧客へ報告した経験はありますか?
この質問で確認したいポイント
自分の評価や立場に悪影響が出る可能性があっても、必要な情報を正確に共有できるかを確認します。
回答例
「担当していたプロジェクトが予定より遅れており、自分の進捗管理にも原因がありました。問題が大きくなる前に上司へ状況を説明し、自分の管理不足についても報告しました。そのうえで、残りの業務と必要なリソースを整理し、スケジュールを再設定しました。」
評価ポイント
- 不都合な事実を隠さないか
- 自分の責任を認識しているか
- 早い段階で報告できるか
- 解決策まで提示できるか
3.上司から会社のルールに反する可能性のある指示を受けた場合、どのように対応しますか?
この質問で確認したいポイント
役職や上下関係だけで判断せず、ルールやリスクを確認したうえで適切に行動できるかを確認します。
回答例
「まず、自分の理解が正しいかを確認します。ルールに反する可能性があると考えた場合は、その理由を上司へ確認します。それでも問題があると判断した場合は、社内規定に沿って人事やコンプライアンス担当者など、適切な部署へ相談します。」
評価ポイント
- 指示を無条件に受け入れていないか
- 事実確認を行えるか
- 感情的ではなく適切な手順で対応できるか
- コンプライアンスへの意識があるか
4.同僚のミスや不適切な行動に気づいた経験を教えてください
この質問で確認したいポイント
他者の問題を放置せず、状況や影響に応じて適切に対応できるかを確認します。
回答例
「同僚が作成した顧客向け資料に数値の間違いがあることに気づきました。まず本人へ確認し、一緒に元データを確認しました。提出前だったため、その場で修正できました。その後、チームでも確認方法を共有し、同様のミスを防ぐようにしました。」
評価ポイント
- 問題を放置していないか
- 相手を一方的に非難していないか
- 事実を確認しているか
- 組織全体の改善につなげているか
5.守ることが難しい約束や期限に直面したとき、どのように対応しましたか?
この質問で確認したいポイント
約束を守る努力だけでなく、難しいと分かった時点で適切に報告し、期待値を調整できるかを確認します。
回答例
「顧客へ約束した期限に間に合わない可能性があることが分かった時点で、すぐに上司と顧客へ状況を共有しました。遅れる直前まで待つのではなく、理由と新しい予定日、影響を最小限にするための対応策を説明しました。」
評価ポイント
- 問題を早期に共有できるか
- 実現できない約束をしないか
- 相手への影響を考えているか
- 代替案を提示できるか
6.機密情報や重要な情報を扱う際、どのような点に注意していますか?
この質問で確認したいポイント
情報の重要性を理解し、日常業務で具体的な管理行動を取っているかを確認します。
回答例
「給与情報や社員情報を扱う場合は、必要な担当者だけがアクセスできる場所で管理しています。また、メール送信時には宛先と添付ファイルを必ず確認し、個人の端末へ保存しないようにしています。」
評価ポイント
- 機密情報への意識があるか
- 具体的な管理方法を説明できるか
- 社内ルールを理解しているか
- 情報漏えいのリスクを認識しているか
7.自分の成果として評価されたものが、実際には他の人の貢献だった場合、どうしますか?
この質問で確認したいポイント
自分に有利な状況でも、他者の成果を正当に評価できるかを確認します。
回答例
「上司から自分のアイデアとして評価された内容が、実際には同僚から提案されたものだった場合は、その場で誰のアイデアだったのかを説明します。チームで成果を出すためには、貢献した人が正しく評価されることが重要だと考えています。」
評価ポイント
- 他者の成果を尊重できるか
- 自分に有利な状況でも正直に行動できるか
- 公平性を重視しているか
- チーム内の信頼を意識しているか
8.顧客や上司にとって都合の悪い情報を伝えた経験を教えてください
この質問で確認したいポイント
相手が聞きたい情報ではなく、意思決定に必要な正確な情報を伝えられるかを確認します。
回答例
「顧客から希望された納期では品質を保証できないと判断したことがあります。そのため、単に『できません』と伝えるのではなく、必要な工程とリスクを説明し、品質を維持できる現実的な納期と代替案を提示しました。」
評価ポイント
- 不都合な情報を隠さないか
- 根拠を説明できるか
- 相手の判断に必要な情報を提供できるか
- 代替案を考えられるか
9.会社の利益とルール・倫理が衝突した場合、どのように判断しますか?
この質問で確認したいポイント
短期的な成果だけでなく、コンプライアンスや会社の長期的な信用を考えて判断できるかを確認します。
回答例
「短期的に売上や利益につながるとしても、法律や会社のルールに反する可能性がある場合は、そのまま進めません。まず事実とルールを確認し、判断が難しい場合は上司や担当部署へ相談します。短期的な利益よりも、会社の信用や長期的なリスクを考えることが重要だと思います。」
評価ポイント
- 短期的な成果だけで判断していないか
- 法令や社内ルールを重視しているか
- 必要に応じて相談できるか
- 長期的なリスクを考えられるか
10.あなたにとって誠実性(インテグリティ)とは何ですか?
この質問で確認したいポイント
応募者自身が誠実性をどのように定義し、仕事上の行動と結び付けて考えているかを確認します。
回答例
「私にとって誠実性とは、誰かに見られているかどうかに関係なく、自分の責任と会社のルールに沿って正しい行動を取ることです。また、自分にとって都合の悪い状況でも事実を隠さず、必要な相手へ正確に伝えることも誠実性だと考えています。」
評価ポイント
- 誠実性を自分の言葉で説明できるか
- 具体的な行動と結び付いているか
- 責任感や倫理観があるか
- 過去の行動との一貫性があるか
STAR法を使って回答を深掘りする
誠実性に関する質問では、応募者が面接官の期待する「模範回答」をする可能性があります。そのため、最初の回答だけで判断しないことが重要です。例えば、「仕事でミスをしたらすぐに報告します」という回答があった場合は、実際の経験について次のように深掘りします。
- 実際にミスをした経験を教えてください
- そのとき、最初に誰へ報告しましたか
- いつ報告しましたか
- なぜそのタイミングで報告したのですか
- あなた自身の責任はどこにありましたか
- 上司や顧客はどのように反応しましたか
- 結果としてどうなりましたか
- 同じ問題を防ぐために何を変えましたか
STAR法に沿って確認することで、抽象的な価値観ではなく、実際の行動を評価しやすくなります。
誠実性を評価するときの注意点
誠実性は重要な採用基準ですが、面接官の主観だけで判断しないことも重要です。「真面目そう」「素直そう」「信頼できそう」といった第一印象だけでは、誠実性を正確に判断することはできません。また、応募者が企業のMission・Vision・Valuesに共感していることと、誠実性が高いことも同じではありません。企業の価値観への共感はカルチャーフィットを確認する材料の一つですが、誠実性については、過去の具体的な判断や行動を確認する必要があります。そのため、面接では募集ポジションに必要な行動を事前に定義し、共通の質問と評価基準を設定しましょう。
例えば、5段階評価を使用する場合も、「5=誠実性が高い」「1=誠実性が低い」とするだけでは、面接官によって判断が異なります。「問題発生後すぐに関係者へ報告し、自分の責任を説明したうえで解決策と再発防止策まで実行している」など、具体的な行動基準を設定することで評価のばらつきを抑えやすくなります。
インドネシア採用における誠実性に関するよくある質問(FAQ)
Q. 面接で応募者の誠実性を見極めるにはどうすればよいですか?
A. 「あなたは誠実ですか?」と直接聞くだけではなく、過去にミスをした経験、不都合な情報を報告した経験、ルールと成果が衝突した経験などを質問しましょう。STAR法を使って、状況、本人の役割、具体的な行動、結果まで確認することが重要です。
Q. 「あなたにとって誠実性とは何ですか?」だけでは不十分ですか?
A. 応募者の価値観を理解する質問としては有効ですが、それだけで誠実性を判断するのは難しいでしょう。定義を聞いた後に、「実際にその考え方に基づいて行動した経験を教えてください」と質問し、過去の行動を確認することをおすすめします。
Q. 誠実性を特に重視すべき職種はありますか?
A. 経理、財務、税務、購買、人事など、会社資産、個人情報、機密情報を扱う職種では特に重要です。また、営業、管理職、経営幹部など、顧客や部下に対する意思決定の影響が大きいポジションでも重要な評価項目です。ただし、誠実性は基本的にすべての職種で確認すべき要素です。
Q. 誠実性とカルチャーフィットは同じですか?
A. 同じではありません。カルチャーフィットは、応募者の価値観や働き方と企業文化との適合性を見る考え方です。一方、誠実性は、ルールを守る、自分の責任を認める、正確な情報を伝えるなどの判断や行動に関する要素です。企業理念への共感だけで誠実性を判断しないようにしましょう。
Q. 誠実性を評価する際に注意すべきことは何ですか?
A. 面接官の第一印象や「真面目そう」「素直そう」といった曖昧な評価だけで判断しないことが重要です。すべての候補者に共通する質問と評価基準を設定し、過去の具体的な行動に基づいて評価しましょう。
Q. リファレンスチェックで誠実性を確認できますか?
A. リファレンスチェックは補助的な確認方法として活用できますが、その結果だけで誠実性を判断するべきではありません。候補者本人への面接、過去の行動、職務経験などと組み合わせて総合的に評価することが重要です。
まとめ
誠実性(インテグリティ)は、インドネシア採用において確認しておきたい重要な評価項目の一つです。特に重要なのは、「誠実性を大切にしています」という応募者の言葉だけで判断しないことです。自分のミスをどのように報告したのか、不都合な事実をどのように伝えたのか、ルールと成果が衝突したときに何を基準として判断したのかなど、過去の具体的な経験を確認しましょう。また、誠実性を「真面目そう」「日系企業に合いそう」といった曖昧な印象で評価すると、面接官によって判断が変わる可能性があります。募集ポジションで求める誠実性を具体的な行動として定義し、共通の質問と評価基準を設定することが重要です。
STAR法を活用して、Situation(状況)、Task(役割)、Action(行動)、Result(結果)まで深掘りすることで、応募者の価値観だけでなく、入社後にも再現できる行動特性をより正確に見極めることができます。インドネシア採用で活用できるその他の面接質問や評価方法については、当サイトの関連記事もぜひご覧ください。
Peoplyeeでは、2013年から1,200社以上の日系企業のインドネシア採用を支援してきた経験をもとに、企業ごとの組織文化や求める人物像を整理したうえで、Job Profile(求める人物像)の設計、行動面接を活用した面接設計、評価基準の策定、人材紹介まで一貫してサポートしています。「誠実性(インテグリティ)の高い人材を採用したい」「自社の価値観に合う人材を見極めたい」「面接だけでは候補者の誠実性を十分に判断するのが難しい」とお考えの企業様は、ぜひお気軽にPeoplyeeまでご相談ください。


